• ウィルコラ

    バングラデシュではスナドリネコの保全活動を行っています。

    スナドリネコはネコ科の一種で、体重は6~16㎏程度の大きさです。漢字では「漁り(すなどり)ねこ」、英名ではFishing catと呼ばれるように、魚をとり、湿地を好むと考えられています。スナドリネコは絶滅危惧種で、世界で南・東南アジアにのみ生息しています。特に国土の中に多くの湿地や川を抱き、雨季には国土の50%が湿地と分類されるバングラデシュは重要な生息地です。

    活動地域

    WilCoLaの活動地域は、内陸湿地が特に多い北東部シレット地方にあり、その中でも一番大きなハカルキハオールと呼ばれる湿地の周辺地域です。ハカルキハオールは、100種以上の淡水魚や、絶滅危機の度合いが最も高いカテゴリーに属するアカハジロなどの希少種を含む渡り鳥・留鳥、スナドリネコを含む多くの哺乳類の生息地となっています。

    また、湿地を囲むように暮らす人々にとっても、この湿地は大切な場所で、母なる湿地とも呼ばれています。湿地の恵みである淡水魚は重要な食料であり、現金収入源でもあります。湿地林は毎年のように発生する洪水から村を守り、乾季には放牧や季節的な農地として、人々の生活を支えています。

    活動の背景と目的

    ハカルキハオールでは、多くの野生動物と人々が湿地とともに暮らしてきましたが、湿地周辺の人口が20万人を超えた現在、人と野生動物が一緒に暮らしていく上では問題が多くあります。薪に利用するため、湿地林を伐採しすぎてしまうことや、食肉として売るために、渡り鳥の密猟なども行われています。また、湿地に生息するスナドリネコは人々が飼育しているニワトリやアヒルを襲うことがあるうえ、「トラ」と誤認識されて恐れられているため、人々は排除すべき動物と認識し、見つけ次第、捕殺してしまうことが多く起こっています。

    しかし、「湿地林を切るのはよくない」「密猟はダメ」「絶滅危惧種のスナドリネコを守る」と簡単に言うこともできません。それぞれに守りたい大切な人たちや暮らしがあり、何とかして捻出したい子供の教育費や家族の薬代などを手に入れるための場合もあるからです。

    そこで、WilCoLaはスナドリネコに必要な生息地を確保するとともに、地域の人々がスナドリネコを殺したり、洪水から村を守ってくれる湿地林を自ら破壊しなくてもすむような、人と自然の共生の形を地域の人々と一緒に考え、作っていくことを目的として活動しています。

    現在の主な活動

    「地域の保全は地域の人々の手で」を目指し、

    1.湿地の近くの森林エリアなど、スナドリネコが生息できる場所を確保するため、自動撮影カメラを利用して生息状況を調査する

    2.湿地の生態系サービスや持続可能な利用について、小学校などで授業を行う

    3.湿地の哺乳類に興味を持つ村人を保全の現場で雇用し、共同での調査や教育活動を行う

    もっと背景を詳しく知りたい方へ

    スナドリネコを実際に見ることができ、展示パネル等で現状を学ぶことができる水族館

    鳥羽水族館:https://www.aquarium.co.jp/kannai/mori.html

    スナドリネコの現状(英語)

    IUCN レッドリスト:https://www.iucnredlist.org/species/18150/50662615

    バングラデシュの湿地(英語)

    IUCN(1989)A Directory of Asian wetlands:https://portals.iucn.org/library/sites/library/files/documents/1989-Scott-001.pdf

    バングラデシュ北東部の暮らし:国連大学ウェブマガジンのある男性のストーリー(日本語):