• ウィルコラ

    昨年、インドネシア・スマトラ島にあるタンカハン(Tangkahan)という小さな村を訪れたときのことを書こうと思います。この村はグヌンレウセル国立公園(Gunung Leuser National Park)の端に位置して、ゾウとの触れ合い体験ができる自然スポットとして人気を集めています。

    一番人気のアクティビティは、ゾウの背中に乗ってジャングルを巡るトレッキングです。ゾウ乗りといえば、ゾウ使いによる厳しい調教や、ゾウの背中を痛めるような重労働を強いる動物虐待であることが、多くの動物愛護団体等から非難されています。

    しかしタンカハンでは、環境団体の協力もあって、ゾウ乗り以外の収入源となるアクティビティを確立しようとしているところでした。

    私は、当時始めたばかりの「ゾウのお散歩コース」に参加させてもらいました。ゾウが自由にジャングルの中で食事を探して歩き回る姿を、ガイドの村人と一緒に後ろからついて行く1~2時間のアクティビティです。

    その日、私がお散歩についていったのは、母ゾウと、まだ半分くらいの大きさの子ゾウでした。母ゾウの周りで遊びまわる子ゾウが印象的でした。子ゾウは泥の水たまりでさんざん寝ころんだ後、「そろそろ行くよ」と声をかけたガイドと私たちに向かって、鼻いっぱいに吸い込んだ泥水を吹きかけました。

    この日ガイドをしてくれたおじさんは、ゾウの生態だけでなく、村のことやガイドに取り組む気持ちを話してくれました。

    かつてこの村は、観光客など訪れない山間地帯で(現在も、空港のあるメダン市から4WD車じゃないと進めない悪路を3~4時間かけて行きます)、彼自身を含め、多くの村人は森林の違法伐採により生計を立てていたそうです。

    禿げ山になっていく村を見ながら、このままでは自分たちの子どもが生きていけないと気づき、村の皆で話し合った結果、違法伐採に代わる生活手段としてゾウ乗りを観光資源にすることにしたのが10年以上前のこと。村の何人かと一緒にタイへ行き、本格的な調教技術を学び、それが正しいことだと信じてタンカハンで実践してきました。

    ゾウ乗りは少しずつ知名度を上げて、近くの観光地であるブキット・ラワン(Bukit Lawang)のついでに訪れる観光客も増えました。もう違法伐採をせずに、生活することができるようになりました。

    しかし近年、ヨーロッパ観光客を中心にゾウ乗りを非難する声が高まり、このままゾウ乗りを続けていては将来がないとまたもや気づかされます。とはいえ、これまで飼育してきた十数頭のゾウを捨てるわけにもいきません。

    そこで外部の団体などの協力を得ながら、ゾウに優しい訓練の仕方や、ゾウ乗り以外のアクティビティを考えることにしたそうです。また、「エレファント・パトロール」として見回りを行うことで、民家に出てきた野生のゾウを追い返す役割を担っています。

    まだゾウ乗りなしに生計を立てることはできないようですが、これらの取り組みが軌道にのるように、村の若者たちも積極的に協力しています。現在は、このコロナ禍で現地へ行くことがかないませんが、現地を再度訪れることができたら、WilCoLaが協力できることを話し合っていきたいと考えています。