• ウィルコラ

    ミャンマーでは、近年、森林や湿地の減少が加速しています。その結果、野生動物の生息地や餌動物は減少し、野生動物と人の生活圏の重複が進んでいます。

    人は生きるために、密猟や違法伐採等を行うことがあります。その一方で、野生動物も、子育てや生存のために、人間の生活の糧である家畜・家禽を襲ったり、農作物に被害を与えることもあります。また、野生動物が人と遭遇し、襲ってしまうこともあります。野生動物に襲われた村人たちは、恐怖心や怒りから、野生動物に仕返しをする場合もあります。

    人と野生動物が共生していくためには、どうしたらよいのでしょうか。

    スナドリネコが生息するミャンマーのメインマラ島自然保護区※でも、保護区近隣の村人たちがイリエワニに襲われ、恐怖と怒りにかられた村人たちが、イリエワニに仕返しをするという状況が続いています。

    現地森林局の話では、近隣の村人が保護区に侵入し、毒を用いた違法な漁を行ったり、マングローブを違法に伐採した結果、ワニはより遠くへ食べ物を探しに行かなくてはならなくなり、村人と遭遇する機会が増えてしまっているということです。

    ワニに襲われても、政府からの補償はない一方で、人々がワニを殺すと1994年に制定された保護法により、5年の禁固刑に処せられます。

    ワニが人を襲わないようにするため、森林局は保護区を柵で囲むことを提案しましたが、実現には至っていません 。また、パトロールを行っていますが、パトロールの人数が十分ではなく、密猟者や毒などを用いた違法な漁、マングローブの違法伐採は増える一方です。

    元記事:「Fishing communities risk crocodile attacks in the Ayeyarwady delta」

    https://frontiermyanmar.net/en/fishing-communities-risk-crocodile-attacks-in-the-ayeyarwady-delta                        

     

    マングローブ林が広がるメインマラ島自然保護区の入り江。(Photo by WilCola)

    メインマラ島自然保護区(Meinmahla Kyun Wildlife Sanctuary)は、イラワジデルタと呼ばれるデルタ地帯にあります。2003年にASEAN遺産公園に指定され、2017年には国際的に重要な湿地としてラムサール条約湿地にも登録されました。

    この保護区は、イリエワニ Saltwater crocodiles (Crocodylus porosus)の生息地としても知られています。イリエワニは、ワシントン条約(CITES:絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)によって、オーストラリア、インドネシア、パプアニューギニアの個体群以外の商業取引が禁止されています。ミャンマーにおいても、1994年にワニの取引が法律によって禁止された結果、イリエワニの数は徐々に回復していると考えられています。