スナドリネコ
Prionailurus viverrinus
Fishing Cat ── 泳いで魚を捕る、南アジア・東南アジアの湿地に生息するネコ
スナドリネコとは?
スナドリネコは、南アジアから東南アジアにかけて、アジアの国々に生息する野生のネコの一種で、小型の野生ネコに分類されます。英名Fishing cat、和名も漁りに由来するように、脚には水かきがあり、泳ぐだけでなく潜水して魚を捕らえることができる、数少ない野生のネコ科動物です。
身体の大きさはだいたい中型犬程度あり、陸上では鳥類やネズミも捕食します。水陸両用のスナドリネコですが、湿地から遠く離れている地域での生息確認は限られており、魚を好むことから、スナドリネコの生存は湿地の保全に懸かっていると考えられています。世界にはおよそ40種の野生ネコ科動物が生息するといわれますが、水に入ることを好み、泳ぎを得意とする種はそのなかでもごくわずかで、スナドリネコは世界のネコ科動物の中でも珍しい存在です。
湿地を泳ぎ、潜水して魚を捕らえるスナドリネコ。
基本データ
アジアの国々に生息する野生のネコの中でも、湿地という特殊な環境に適応したスナドリネコの、基本的な特徴です。
南アジア〜東南アジアの湿地に生息。湿地から離れた地域での生息確認は限られる。
ネコ科としては大柄。水かきのある脚を持ち、泳ぎと潜水が得意。
潜水して魚を捕らえるほか、陸上では鳥類やネズミも捕食する。
スナドリネコの豆知識
Photo: Shutterstock
世界にはおよそ40種の野生ネコ科動物が生息するといわれますが、多くは水を苦手とします。指の間に水かきを持ち、自ら進んで水に入る"泳ぐネコ"は、そのなかでもごく珍しい存在です。
泳ぐだけでなく、時には頭から水に潜って魚を捕らえることもあります。まさに「魚を捕るネコ」の名にふさわしい狩りの姿です。
陸上では爪が完全に引っ込まない構造をしており、ぬかるんだ湿地の泥の上でも足を滑らせずにしっかりと踏ん張ることができます。
カンボジアでは2013年までに地域絶滅したと考えられていましたが、2015年の自動撮影調査によって、生き残っていた個体群が発見されました。
出典:Smithsonian's National Zoo and Conservation Biology Institute、IUCN Cat Specialist Group ほか
バングラデシュのスナドリネコが
直面する2つの脅威
数多くの湿地を有するバングラデシュは、スナドリネコの保全において非常に重要な場所です。しかし現地のスナドリネコは、次の2つの大きな脅威に直面しています。
生息を脅かす要因
地域住民が建材・薪の調達のため湿地林を伐採し、淡水魚を主なタンパク源としているほか、乾季には放牧や農地転換も盛んに行われている。人口密度・自然資源への依存度が高く、湿地生態系の消失・劣化が進んでいる。
生息地を失ったスナドリネコが村周辺の緑地を利用するようになり、住民との遭遇が増加。人を襲う危険な動物という誤った認識から、遭遇時に撲殺されてしまうケースが後を絶たない。
村人に撲殺されたスナドリネコのメス。残念なことに授乳中の母ネコでした。
バングラデシュ北東部での
保全研究・活動
このような状況を受けて、私はバングラデシュのジャハンギナガル大学動物学部や森林局と共に、2017年からスナドリネコの保全に向けた調査研究と保全活動を実施しています。スナドリネコが何を食べ、いつどこを利用しているかを調べることで、「どのような環境を保全すればよいのか」を明らかにしようとしています。
今までの調査から、地域住民がスナドリネコを捕殺する理由は、家禽やヤギを襲うからというよりも、スナドリネコ自体が人に危害を及ぼす危険な動物であるという誤った認識によるものであることがわかりました。
そこで、長期的な視点で環境教育に取り組みつつ、スナドリネコにとってより安全な生息地がないかを探すことにしました。湿地から近く川も多い丘陵地の保護区を候補地として選定し、公益信託地球環境日本基金のご支援により、この保護区で初めてとなる自動撮影調査を実施。無事にスナドリネコの生息が確認でき、北東部の丘陵地帯では初めての記録となりました。
調査を通して生まれた変化
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助成後の活動
2020年度の公益信託地球環境日本基金のご支援により、スナドリネコにとってより安全な生息地となる保護区を見つけることができました。次は、スナドリネコが捕殺されずに、この保護区と近くの湿地を行き来できるような経路を見つけ、その連結性を守ることが必要です。そこで、スナドリネコに発信機を付けて移動経路を追跡する調査を始めました。
移動経路が明らかになれば、保護区〜移動経路〜湿地という広い地理的範囲での保全計画を作成する第一歩を踏み出すことができます。あわせて、地域住民がスナドリネコを捕殺する理由となっている誤認識の解消と、減少しつつある湿地生態系の保全に向けて、村の有志や地域の小学校と連携しながら、環境教育カリキュラム・教材作成や野外フィールド教室の実施を、専門家と一緒に準備しています。
いつか地域の中から、自分たちの湿地を保全する子どもや若者が出てくることを夢見て、長期的に取り組んでいきたいと思います。
移動経路を明らかにするため、発信機を付けて追跡調査を行う。
